セミナー

角丸四角形:  第14回 セミナー

日時

2012824日(金)17:00-18:30

場所

静岡大学 理学部 B212号室

講師

小林 康一 博士

 

東京大学 大学院 総合文化研究科

演題

クロロフィルと膜脂質合成からみた葉緑体のバイオジェネシス

 

 

 高等植物では、半自律的な細胞内小器官である色素体が、役割に応じて様々な形態へと分化することで、多様な細胞の機能を支えている。その中でも、葉緑体は光合成によるエネルギー生産を担っており、植物の生命活動の根幹を支えている。葉緑体の発達時に見られる最も特徴的なイベントは、チラコイド膜の形成とクロロフィルの蓄積である。チラコイド膜は、ガラクト脂質を主とした脂質二重層により構成され、そこにクロロフィルと光合成タンパク質の複合体が適切に構築されることで、光合成電子伝達系が作り上げられる。この光合成システムは植物の 光独立栄養生長に必須である一方、不完全な反応によりクロロフィルに起因する活性酸素ダメージを生じることから、その構築は器官の発達や生育環境に応じて厳密に制御されている。

 私は、チラコイド膜脂質とクロロフィルの合成の二つの視点から、葉緑体発達機構の解明に取り組んできた。その結果、葉緑体特有の脂質であるガラクト脂質の合成がチラコイド膜形成に必須であり、さらにガラクト脂質による膜の形成が、光合成構築における様々なプロセスに必要であることを明らかにした。一方で、根の緑化に着目した解析から、葉緑体の分化過程において、クロロフィル合成が光合成系の構築と連動した厳密な遺伝子発現制御を受けることを見出した。この制御には植物ホルモンが関与しており、器官分化や環境応答と協調した葉緑体の分化制御に関わると考えている。本セミナーの最後では、葉緑体発達の過程で、チラコイド膜の形成とクロロフィル合成がどのように相互に影響し合うかについて議論したい。