セミナー

角丸四角形:  第20回 セミナー

日時

20131213日(金)16:00-18:00

場所

静岡大学 総合研究棟 4412号室

講師

坂本 亘 博士

 

岡山大学資源植物科学研究所

演題

葉緑体におけるホメオスタシスとストレス応答

 

 

 葉緑体(クロロプラスト)は光合成を行う細胞内の小器官(オルガネラ)で、進化の過程で始原細胞に共生した光合成細菌(シアノバクテリア)に由来する。細胞内共生により生じた葉緑体は、下等生物では分化せず葉緑体のまま光合成を続ける。しかし高等植物では、器官分化に伴って、光合成以外の様々な機能を担うようになり、光合成をせずにデンプンや色素を貯蔵するアミロプラスト、クロモプラストなどに転換するようになった。これらを総称してプラスチド(plastid = 可塑性の高い小器官)と呼ぶ。このようなプラスチドの機能転換は、共生由来のバクテリアにはないので、高等植物が獲得した現象である。植物は、プラスチドをうまく進化させながら光合成をしない器官を作り、地上の環境ストレスに適応する体勢を作り上げていったのである。

 プラスチドは、葉が発生する茎頂組織ではプロプラスチドとして存在するが、葉の分化に従って葉緑体になり光合成を行う。葉緑体の分化は、光化学装置と集光アンテナ、ATP合成酵素を持ったチラコイド膜のダイナミックな形成を伴うが、これらがどのように形成され、維持されるのかについては、非常に多くのことを考えなければならない。例えば、葉緑体は細胞内に多数存在するので、どのように分裂して増えているのだろうか?葉緑体は細胞内共生に由来するため、バクテリア由来のDNAを持っているが、葉緑体内でタンパク質合成されるしくみや、細胞質から輸送されるタンパク質とどのように光合成装置を作るのだろうか?葉緑体の膜はどのように維持されているのだろうか?葉緑体はどのように遺伝するのだろうか?演者らの研究室では、これらの葉緑体分化に関わる新たな因子を遺伝学的に見つける研究を長く行っている。今回は、光合成と葉緑体の機能に関わる突然変異体の解析を通して明らかになった葉緑体ホメオスタシス(恒常性維持)のしくみや、光ストレス応答などについて例を挙げながら紹介する。

 

参考文献

Sakamoto, W., Miyagishima, S., and Jarvis, P. (2008) Chloroplast biogenesis: Plastid division, inheritance, regulation, protein import and proteome. The Arabidopsis Book, http://www.aspb.org/publications/arabidopsis/.

二層膜オルガネラの遺伝学. 蛋白質核酸酵素増刊 (2005) 林純一、杉山康雄、坂本 亘、田中 寛、正木春彦編. 共立出版.

 

 

講師

加藤 裕介 博士

 

岡山大学資源植物科学研究所

演題

光化学系II修復におけるD1タンパク質分解メカニズム

 

 

 光は植物の生育に必要だが、同時にチラコイド膜上の光合成装置に損傷を与えており、光合成能の低下、光阻害を引き起こす。光化学系IIの反応中心タンパク質D1は光による損傷のターゲットであり、植物は損傷を受けたD1を特異的かつ迅速に分解し、新たなD1に置き換える修復サイクル(PSII repair cycle)により光合成能を維持している。損傷を受けたD1の分解は光化学系II修復過程で重要なため、私達はシロイヌナズナを用いてこれを担うプロテアーゼの解析を進めてきた。本セミナーでは光化学系修復サイクルの全体像を説明するとともに、D1分解に焦点をあて、二つの原核生物型プロテアーゼ(FtsHDeg)の役割とその協調的な分解機構、さらにD1リン酸化によるD1分解過程の調節について紹介する。

 

参考文献

Kato, Y., Sun, X., Zhang, L., and Sakamoto, W. (2012) Cooperative D1 degradation in the photosystem II repair mediated by chloroplastic proteases in Arabidopsis. Plant Physiol., 159: 1428-1439. Abstract

Kato, Y., Kouso, T., and Sakamoto, W. (2012) Variegated tobacco leaves generated by chloroplast FtsH suppression: implication of FtsH function in the maintenance of thylakoid membranes. Plant Cell Physiol., 53: 391-404. Abstract

Kato, Y. and Sakamoto, W. (2010) New insights into the types and function of proteases in plastids. Intl. Rev. Mol. Cell Biol., 161: 185-218. Abstract

Kato, Y., Miura, E., Ido, K., Ifuku K., and Sakamoto W. (2009) The variegated mutants lacking chloroplastic FtsHs are defective in D1 degradation and accumulate reactive oxygen species. Plant Physiol., 151: 1790-1801. Abstract

Kato, Y. and Sakamoto, W. (2009) Protein quality control in chloroplasts: a current model of D1 protein degradation in the Photosystem II repair cycle. J. Biochem., 146: 463-469. Abstract

Kato, Y., Miura, E., Matsushima, R., and Sakamoto, W. (2007) White leaf sectors in yellow variegated 2 are formed by viable cells with undifferentiated plastids. Plant Physiol., 144: 952-960. Abstract