セミナー

角丸四角形:  第8回 セミナー

日時

2011118日(火)17:00-18:30

場所

静岡大学 理学部 B212号室

講師

中村 友輝 博士

 

Alexander von Humboldt Research Fellow

演題

シロイヌナズナの栄養欠乏応答および器官発生におけるリン脂質の機能

 

 

 脂質は生体を構成する必須の分子であり、生体膜の機能維持やエネルギー貯蔵、またシグナル伝達などに重要な役割を果たす。本セミナーでは、講演者らがシロイヌナズナを用いて近年明らかにしてきた、リン脂質に関する2つの新たな機能について紹介する。

(1)リン欠乏における膜脂質リモデリングの分子機構

リン欠乏に晒された植物は、生体膜のリン脂質を分解して糖脂質に置き換えることで、得られたリンを生体のより必要とされている部分に供給しつつ、生体膜の機能を維持していると考えられる。我々は、こうしたリン脂質から糖脂質への膜脂質リモデリングにおける主要代謝経路を明らかにしてきた。まず、リン脂質の 分解にはホスホリパーゼCによる経路と、ホスホリパーゼDおよびホスファチジン酸ホスファターゼによる経路があることを生化学的に明らかにし、それぞれを担う新規の酵素遺伝子の単離とノックアウトによる機能解析を行った。その結果、これら2つの代謝経路はともに重要な役割を果たし、膜脂質リモデリングは植物のリン欠乏耐性に必須の機能であることが明らかとなった。

(2)花序メリステムの維持におけるリン脂質の役割

シロイヌナズナの花芽はサイズが小さいため特定の発達段階にある花芽を大量にサンプリングすることは困難である。我々はシロイヌナズナにおいて花芽の同調発生系を構築し、花発生における脂質プロファイルを発達段階ごとに調べてきた。その結果、膜の主要なリン脂質であるホスファチジルコリン(PC)が、花序メリステムの機能維持にかかわるタンパク質Terminal Flower1 (TFL1)と相互作用することを明らかにした。TFL1in vitroにおいてPCと特異的に結合し、また薬剤誘導性プロモーターを用いて花序におけるPC合成を促進すると、TFL1の機能欠損が亢進された。このことから、PCTFL1と相互作用することにより、花序メリステムの機能維持に関わると考えられる。

 

 

参考文献:

1. Nakamura Y, Koizumi R, Shui G, Shimojima M, Wenk MR, Ito T, and Ohta H (2009) Arabidopsis lipins mediate eukaryotic pathway of lipid metabolism and cope critically with phosphate starvation. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106(49): 20978-83. Abstract

2. Gaude N, Nakamura Y, Scheible W-R, Ohta H, and Dörmann P (2008) Phospholipase C5 (NPC5) is involved in galactolipid accumulation during phosphate limitation in leaves of Arabidopsis. Plant J. 56: 28-39. Abstract

3. Nakamura Y, Awai K, Masuda T, Yoshioka Y, Takamiya K, and Ohta H (2005) A novel phosphatidylcholine-hydrolyzing phospholipase C induced by phosphate starvation in Arabidopsis. J.Biol.Chem. 280(9): 7469-7476. Abstract