セミナー

角丸四角形:  第21回 セミナー

日時

2014718日(金)17:00-18:30

場所

静岡大学 総合研究棟 4412号室

講師

野亦 次郎 博士

 

東京工業大学 資源化学研究所

演題

原始酵素の新しい反応機構〜バクテリオクロロフィル生合成系で働く光非依存型プロトクロロフィリド還元酵素は新奇ラジカル酵素である

 

 

 クロロフィル(Chl)、バクテリオクロロフィル(BChl)は光合成に必須の色素であり、光エネルギーを化学エネルギーに変換する優れた生体分子である。ChlおよびBChlはクロリン環およびバクテリオクロリン環と呼ばれる主要環構造を有し、その光吸収特性が酸素発生型/酸素非発生型という光合成のタイプを決定づけている。

 Chlの主要環構造であるクロリン環は、プロトクロロフィリド(Pchlide)のポルフィリンD環のC17=C18炭素間二重結合が立体特異的に還元されることで形成される。光合成生物は進化的起源の異なる2つの酵素、光依存型Pchlide還元酵素(LPOR)または光非依存型Pchlide還元酵素(DPOR)によってクロリン環形成を触媒する。LPORは短鎖デヒドロゲナーゼ/リダクターゼファミリーに属し、光を利用したユニークな反応機構によってクロリン環形成を行うことが知られている。一方、DPORは窒素固定酵素ニトロゲナーゼと類似した酵素であり、光に依存せずクロリン環形成を触媒するが、その分子機構は全く不明であった。

 最近、私たちはDPORの触媒コンポーネントであるNB-蛋白質の結晶化に成功した。構造解析の結果、触媒部位にあるアスパラギン酸残基と基質Pchlide自身のC17位のプロピオン酸基がプロトンドナーとなり、ポルフィリンD環の立体特異的な還元が行なわれると推察された。この仮説に基づき、変異導入したNB-蛋白質と基質アナログを組み合わせた解析を行ったところ、反応中間体に由来する有機ラジカル種が検出され、DPORはラジカル中間体を経由する反応を触媒していることが明らかとなった。本発表では、明らかになりつつある“光に依存しない”クロリン環形成の分子機構について紹介したい。

 

<参考文献>

Nomata, J. et al. (2014) Dark-operative protochlorophyllide oxidoreductase generates substrate radicals by an iron-sulphur cluster in bacteriochlorophyll biosynthesis. Sci.Rep. 4, 5455; DOI:10.1038/srep05455 Abstract

Nomata J.et al.(2013) Nicotinamide is a specific inhibitor of dark-operative

protochlorophyllide oxidoreductase, a nitrogenase-like enzyme, from Rhodobacter capsulatus. FEBS letters 587:3142-3147. Abstract

Muraki N. et al.(2010) X-ray crystal structure of the light-independent protochlorophyllide reductase. Nature 465:110-115. Abstract